【岩田温の備忘録】イランを攻撃 トランプ演説で気になる点

驚くべき一報だった。

トランプ大統領がイランの核施設を攻撃したことを告げる演説を行った。

読売新聞から引用しておこう。

米軍はイランのフォルドゥ、ナタンツ、イスファハンの三つの主要な核施設に対し、大規模な精密攻撃を行った。

長年にわたり、恐ろしく破壊的な計画を企ててきたこれらの施設の名を誰もが耳にしてきた。

我々の目的は、イランの核濃縮能力の破壊と、世界最大のテロ支援国家がもたらす核の脅威を阻止することだ。

私は世界に対し、これらの攻撃が軍事的に大成功したと報告できる。

イランの主要な核濃縮施設は完全に壊滅された。

中東の暴君であるイランは今、平和を築くべきだ。

さもなければ今後、攻撃はさらに大きく、容易になるだろう。

イランは40年間にわたり、「米国に死を、イスラエルに死を」と言ってきた。

道端の爆弾で我々の国民を殺し、手足を吹き飛ばしてきた。

彼らの憎悪の結果、我々は1000人以上を失い、また、中東全域、世界中で数十万人が亡くなった。

特に(イラン革命防衛隊の)ソレイマニ司令官によって殺された人は多い。

私はとうの昔に、このような事態は許さないと決意した。(イスラエルの)ネタニヤフ首相に感謝と祝意を表す。

我々はかつてないほどのチームワークで協力し、イスラエルに対するこの恐ろしい脅威を根絶するために大きな進歩を遂げてきた。

私はイスラエル軍の素晴らしい職務遂行に感謝したい。

そして何よりも、素晴らしい装置(B2爆撃機など)を操縦した偉大な米国の愛国者たちと、世界が何十年も見たことのないような作戦を実行した全米軍を祝福したい。

これだけの容量での対応はもう必要なくなるだろう。

そう願っている。

ダン・ケイン統合参謀本部議長をはじめ、今回の攻撃に関わった全ての優秀な軍人に祝意を表す。

とはいえ、このままでは済まされない。

この8日間で、イランにとって平和が訪れるか、我々が目撃したよりもはるかに大きな悲劇がやってくるかのどちらかだ。

まだ多くの標的が残ることを忘れてはならない。

今夜の攻撃は、これまでで最も困難で、最も致命的なものだっただろう。

しかし、平和がすぐに訪れないということになれば、我々は他の標的を正確かつ迅速に、巧みに攻撃する。

そのほとんどは数分で実行できる。

我々が今夜実施したようなことが可能な軍隊は世界のどこにも存在しない。

皆様に、そして特に神に感謝する。我々は神を愛し、偉大な軍を愛している。中東に、イスラエルに、そして米国に神の祝福がありますように。(https://www.yomiuri.co.jp/world/20250622-OYT1T50083/

重要なのは「ネタニヤフ首相に感謝と祝意を表す」との言葉と、締めくくりの次の言葉だ。

「皆様に、そして特に神に感謝する。我々は神を愛し、偉大な軍を愛している。中東に、イスラエルに、そして米国に神の祝福がありますように」

アメリカが他国を攻撃すると、「ネオコン」の仕業かと大騒ぎする人々がいる。

確かに、イラク戦争で主導権を持っていたのはネオコンと呼ばれる人々だった。

ネオコンの始祖はアーヴィング・クリストル。

元トロツキストのユダヤ人だ。彼が尊敬していたのはレオ・シュトラウスとライオネル・トリリング。

多くの保守主義者が尊敬しているエドマンド・バークをそれほど評価していないのが特徴だった。

彼らが好んだのは体制変革、すなわち全体主義から民主主義への転換だ。

確かに、イランにおける体制変革を目指しているという意味で今回のアメリカの攻撃はネオコン薫りが漂う。

しかし、今回、より重視しなければならないのは福音派だろう。

アメリカの有権者の四分の一が、プロテスタントの非主流派である福音派を信仰しているとされている。

福音派をひとくくりにすることは粗雑かもしれないが、聖書を原理主義的に理解し、進行する人々と考えておけばよいだろう。

そして彼らが信ずるのは黙示録であり、ハルマゲドンだ。

何か陰謀論めいたことを論じているように思われる人もいるかもしれないが、実際に彼らの多くがそうした信仰を抱いている事実は否定できない。

千年王国の信仰を抱いている彼らは、イスラエルを極めて重視する。

彼らを突き動かしているのは、ユダヤ・マネーというよりも、信仰なのだ。

むろん、ユダヤ・ロビーが大きな影響力を有していることは否定できないが、信仰の力は強固だ。人は必ずしも経済的な利害関係だけで動かない。

信仰の力によって動くことも少なくない。

自らの支持基盤である福音派の願望を断ち切って、トランプ大統領がイスラエルに強硬な姿勢を示すことはない。

トランプ大統領のイスラエル支持、神への感謝は米国内の福音派に向けたメッセージと受け取ることが出来る。

それにしても、今後の世界がどうなるのか、日本も無関心ではいられない。