【岩田温の備忘録】公明党は何故、負けた?

参議院選挙の前哨戦に位置付けられている都議選が終わった。

結果は自民党の歴史的惨敗だったが、その他にも幾つか興味深い点があった。

最も興味深い点は公明党の弱さである。

現有議席が23あったにもかかわらず22人の公認しか出さないという選挙戦術にも驚いたが、彼らが目指していたのは「全員当選」であった。

過去8回の都議選において公明党で公認された候補者は落選していなかった。

いわば無敗神話が存在したのだが、この神話が崩壊することになった。

神話は何故、崩壊したのだろうか。

池田大作というカリスマ的指導者が亡くなった影響を指摘する声もある。

確かに、一つの宗教組織にとってカリスマの喪失は痛手であろう。

しかも、その後、新しいカリスマ的指導者が出現していない。

組織としての創価学会は安泰なのかもしれないが、かつての戦闘的な勢いが見られないのも事実である。

だが、カリスマ的指導者が逝去しただけが敗因ではないだろう。構造的な問題もあったはずだ。

かねてより囁かれていた学会員、すなわち熱心な運動員の高齢化の問題が深刻なのではないか。

日本では信仰者の実数を把握することは極めてむずかしい。

驚くのは、各宗教団体が申告する信者数を合計すると日本国民全体の人口を越えてしまうという奇妙な結果だ。

何を以て信仰者とするのか定義も難しいし、実数を抑えることは困難だ。

それぞれの宗教団体の信仰者の数、男女比、年齢構成を正確に把握するのは不可能といっても過言ではない。

確実に言えるのは日本全体で少子高齢化が進んでいる中、宗教のみがその影響を受けないということはあり得ない。

何よりも深刻なのは、熱心な運動員として働く世代は限られていることだ。

サラリーマンのような仕事に就いている人が選挙期間中に熱心に選挙活動に従事することは不可能だ。

かつて選挙活動の中核を担っていた60代、70代の人々が高齢化してしまった可能性は否定できない。

また、もうひとつ考えられるのは、共働きの影響を受けているのではないかとの点だ。

子育てを終えた専業主婦が多ければ、選挙活動に力を入れることが出来るのは間違いないが、女性の社会進出に伴い、働く女性が増えれば増えるほど、選挙活動に参加できる女性は減ることになる。

私自身、色々な選挙の現場に入って驚いたのは、選挙活動に熱心なのは圧倒的に高齢者、専業主婦の方々が多いという現実だった。

学生たちのボランティアは少ない。平日働く世代のボランティアはほぼ皆無だ。

せいぜい土日にやってきてくれる程度だ。

高齢化と女性の社会進出。

公明党の退潮の原因を考える上で参考になるかもしれない。