【岩田温の備忘録】呆れ果てる石破内閣の外交力の欠如

自民党が次期参院選の全国比例の候補者として鈴木宗男(ムネオ)を公認した。

前回の参院選では日本維新の会の全国比例から出馬し、22万票を獲得し、当選した。

自民党としては一票でも多くの票を獲得したい、一人でも多くの公認候補を当選させたいというのが本音だろう。

選挙で勝利を目指すのは、負けようと覚悟を定めて競馬に向かう人がいないのと同様に自然なことだ。

だが、鈴木宗男なる政治家を日本の与党である自民党が公認したことの意味合いが、世界各国に対してどのようなメッセージを送ることになるのかを冷静に分析しておくべきであろう。

ロシアがウクライナに侵略した事実に対して、鈴木宗男氏はロシアを擁護し、ウクライナへの停戦を求める姿勢を取り続けている。

頑ななまでに親露政策を掲げているのが鈴木宗男氏だ。

彼のブログから、象徴的な言葉を引用しておこう。

「ウクライナ戦争にしてもバイデン前大統領が、武器、資金を送り続けたことが今日こんにちまで長引く要因の一つになった。一にも二にも停戦だと言って武器、資金を送らなければ事態は変わった。」
(2025年5月2日)

「自前で戦えないウクライナが先ずは何の条件も付けず停戦を受け入れるべきです。」
(2025年5月25日)

ムネオの論理に従えば、ウクライナが停戦せずに抵抗を続けていることが問題だということになってしまう。

だが、ロシアの侵攻がなければ、ウクライナが抵抗する必要がないのだから、論理の順序が違う。

ロシアが撤兵してこそ、国際法が遵守され、平和が訪れるのだ。

ロシアのウクライナ侵略は国際法に違反する。

これに対してウクライナが侵略に抵抗しているのは「個別的自衛権」の行使であり、国際法に合致している。

「喧嘩両成敗」というわけにはいかないのだ。

強盗が銀行に押し入り、銃で人を撃ち殺すのは犯罪だ。

しかし、警官が人質を守るために強盗を射殺するのは違法ではない。

同じ殺人であっても罪に問われる場合もあれば、問われない場合もある。

それが法の精神だ。

石破総理はNATOの首脳会談を欠席した。

決定的に愚かな選択だったといってよい。

口先でNATOと足並みをそろえるといっても、結局はNATOを軽視していることを内外に示すことになったからだ。

しかも、愚かで滑稽なのは、トランプ大統領が欠席するから自分も欠席するとの理由だ。

結局、トランプ大統領が出席することになったのだから、情勢判断を誤っていたとしか言いようがないだろう。

また、うがった見方として、NATOが防衛費の増加を求められ、これを承認することを事前に察知した石破総理が出席を見送ったとの議論もあった。

だが、これもおかしな話だ。冷戦時代には、経済に傾注し、軍事力を軽微なものとする「吉田ドクトリン」が有効だった時期もある。

しかし、中国の台頭はそうした過去の体制の存続を許さない状況にまできているのが現実だ。

現実を見つめるのならば、日本が防衛費を増強しなければならないのは明らかだ。

トランプ大統領に会うことが防衛費の増強につながるので逃げ出した、などという人物が日本の総理大臣を務めていてよいはずがない。

余りにも愚かで、滑稽、そして醜悪なのが石破内閣だ。