月刊日本7月号に岩田温の論説が掲載されました!

岩田温×山崎行太郎 今こそ「江藤淳」を読み返す⑤

【概要】
江藤淳『小林秀雄』における小林のドストエフスキー論への評価を取り上げ、小林の評伝は史実や事実関係を軽視した主観的な「構図」の上に成り立っており、それを歪んだ「白痴」的解釈と見る学者の批判に対し、江藤はむしろその主観性を肯定的に捉えていたと指摘する。江藤にとって重要なのは客観的正確さではなく、「人間の現実性」を描くことであり、小林が「思想」よりも「人間」の生きている実感を重視した姿勢に共鳴していたと論じる。さらに、小林秀雄が転向論において人間の弱さや現実を直視し、思想に喰われない生き方を貫いたことを江藤も高く評価していたと述べ、江藤自身がドストエフスキー論を通じて自分自身の思想と対峙し、否定主義者や賢人達への反発を込めて「果てまで歩いて来た」と自己を語っていた点に注目する。江藤の批評は常に自己の生き方そのものと結びついていたと総括している。

【参考文献】
江藤淳『小林秀雄』
小林秀雄『ドストエフスキイの生活』
小林秀雄『文學界』「政治と文学」
E・H・カー『危機の二十年』
ドストエフスキー『罪と罰』
ドストエフスキー『白痴』
フリードリヒ・ニーチェ『ツァラトゥストラはこう語った』
江藤淳『夏目漱石』

【キーワード】
小林秀雄のドストエフスキー論/「構図」と主観性/人間の現実性/思想に喰われない生き方/転向と人間の弱さ/『罪と罰』/E・H・カー/客観性より生の実感/自己と対峙する批評