岩田温×山崎行太郎 今こそ「江藤淳」を読み返す⑫
【概要】
江藤淳が学術論文とは異なり「私」という言葉を用いた著作を数多く書いてきたことを指摘し、江藤にとって「私」とは時代や歴史、社会に投影されるものであり、単なる自叙伝的関心ではないと論じる。『一族再会』を取り上げ、江藤が母方の祖母や祖父の生涯を通じて薩長史観に対する反発を描いていた点に注目し、勝者の記録である「正史」からは捉えられない「存在の闇」を、敗者側である佐賀・薩摩の視点から掘り起こそうとした試みだと評価する。また、江藤が三島由紀夫と対比しつつ、自らのルーツを探る作業を続けていたことを紹介し、小林秀雄と中原中也の対比についても、江藤が小林の都会的洗練と中原の望郷的な感性を意識しながら自らの文業を形成していたと指摘する。江藤の「私」の探究は、単なるエッセイの域を超え、歴史や伝統との対話そのものだったと総括している。
【参考文献】
江藤淳『一族再会』
江藤淳『小林秀雄』
中原中也『山羊の歌』
【キーワード】
『一族再会』/「私」の探究/存在の闇/佐賀の乱/薩長史観への反発/敗者からの歴史/小林秀雄/中原中也都会と望郷/歴史と伝統への対話
