岩田温×山崎行太郎 今こそ「江藤淳」を読み返す⑬
【概要】
江藤の祖父・安太郎が海軍兵学校を首席で卒業した優秀な軍人であり、御前講演で「我皇帝陛下」という呼称を用いていたことに触れ、当時の天皇観が今日とは異なる位置づけだったと指摘する。また祖父・民三郎が「馬鹿者!この戦争は負けだぞ!」と激怒したエピソードを紹介し、江藤が「存在の闇」に踏み込み、祖父の怒りや無念を丁寧に描き出したことを評価する。さらに、江藤淳が民三郎の故郷を訪ね、江藤なりの取材やノンフィクション的手法で文章を書いていた点に触れ、田中角栄が小林秀雄に評価された「生きている文体」を持っていたのに対し、田中の演説には「私」という言葉がまったくなかったと指摘し、政治家の言葉と文学者の言葉の違いを論じる。最後に『一族再会』が第一部で完結し、第二部が書かれなかった理由について、江藤にとって「私」を探究する場所が閉じられてしまったからだろうと考察している。
【参考文献】
江藤淳『一族再会』
江藤淳「帰りなん、いざ」
江藤淳『季刊芸術』
【キーワード】
天皇と「私」/「馬鹿者!この戦争は負けだぞ!」/田中角栄/政治家の言葉と「私」の不在/『一族再会』/「帰りなん、いざ」/ノンフィクション的手法
