岩田温×山崎行太郎 今こそ「江藤淳」を読み返す⑭
【概要】
岩田は、江藤淳が高校生の頃サロイヤンの短編小説を翻訳した経験に触れ、江藤の文体はすでにこの翻訳行為の中に「作家は行動する」の萌芽が見られると指摘する。『帰りたいけど帰れない』というテーマについては、夏目漱石『道草』や『帰ってきた男』を挙げ、江藤の描く故郷が単なる懐かしさの対象ではなく、拒否と憧憬が同居する両義的な場所であることを論じる。また、『閉ざされた言語空間』を踏まえ、江藤が占領軍による憲法改正の正体を暴きながらも、故郷である戦後日本そのものには帰れないという構造を持っていたと分析する。さらに『一族再会』における「死を意識する」姿勢に触れ、江藤にとって故郷に錦を飾ることは死や絶対的正義と結びついた行為であり、二・二六事件の青年将校のような「偉い人」の死生観とも通じると述べ、江藤の文学の本質は死にあり、幼少期からその主題にこだわり続けた作家だったと総括している。
【参考文献】
ウィリアム・サロイヤン『故郷へ帰る』
江藤淳『作家は行動する』
江藤淳『閉ざされた言語空間』
江藤淳『一族再会』
江藤淳『フロラ・フロラアヌと少年の物語』
夏目漱石『道草』
ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』
【キーワード】
サロイヤン/「作家は行動する」/故郷への両義性/帰りたいけど帰れない/『閉ざされた言語空間』/憲法改正への視座/『一族再会』と死/二・二六事件と正義/死を意識する文学/米川正夫
