岩田温×山崎行太郎 今こそ「江藤淳」を読み返す⑱
【概要】
江藤淳が大庭みな子『寂寞』を高く評価し、大庭が学生時代からアメリカ文学に親しみ、老子や道教哲学にも通じていた点で江藤と共通の関心を持っていたと紹介する。江藤自身が老子の「道」に若い頃から関心を寄せていた経緯に触れ、谷崎潤一郎『鍵』と大庭『寂寞』を比較しながら、谷崎が乱倫と荒廃を通じて秩序崩壊後の世界を描いたのに対し、大庭は名づけえない混沌そのものを描いたと論じ、江藤がこの「名前のない世界」に強く共感していたと指摘する。さらに江藤の「治者」概念を援用し、統治や秩序を失った世界を描く文学の意義を論じつつ、ニーチェの「三様の変化」やドストエフスキー『罪と罰』を引きながら、混沌から新たな秩序と創造性が生まれる過程にこそ人間の本質があると述べる。最後に、暗黒や死を見つめることによってのみ人間は真の秩序を回復しうるという江藤的な問題意識を確認している。
【参考文献】
大庭みな子『寂兮寥兮』
大庭みな子『三匹の蟹』
谷崎潤一郎『鍵』
江藤淳『自由と禁忌』
老子『老子道徳経』
フリードリヒ・ニーチェ『ツァラトゥストラはこう語った』ドストエフスキー『罪と罰』
【キーワード】
大庭みな子/『寂寞』/老子の「道」/谷崎潤一郎/『鍵』/名づけえない混沌/治者の文学/秩序と荒廃/ニーチェ/「三様の変化」/ドストエフスキー/『罪と罰』/荒廃からの創造/暗黒と死の凝視
