月刊日本10月号に岩田温の論説が掲載されました!

岩田温×山崎行太郎 今こそ「江藤淳」を読み返す⑳

【概要】
中上健次『千年の愉楽』の「路地」が近代の法律や道徳を超えた世界であり、そこに暮らすオリュウノオバが文字ではなく「声」によって記憶を伝える存在である点を指摘する。柄谷行人らポストモダン思想家が中上に注目したのに対し、中上の小説はむしろプレモダンの世界を描いており、江戸期に活躍した本居宣長こそ江藤に最も適した思想家だと論じ、江藤が『近代以前』という著書で近代化以前の日本に関心を寄せていたことを紹介する。また、江藤がフォークナーやウィルソン『愛国の血糊』を通じてアメリカ南部に強い関心を抱き、敗戦国としての日本を「南」に重ねていたと述べる。さらに慶應時代の江藤との個人的な交流を回想し、大学教授職や経済的安定にこだわった江藤の姿に、転落や没落への生理的恐怖を見出す。最後に吉行淳之介『夕暮れまで』を取り上げ、その背後に戦後日本の政治的闇が隠れていると論じている。

【参考文献】
中上健次『千年の愉楽』
江藤淳『近代以前』
江藤淳『自由と禁忌』
江藤淳『閉ざれた言語空間』
エドマンド・ウィルソン『愛国の血糊』
吉行淳之介『夕暮れまで』
吉行淳之介『寝台の舟』
大江健三郎『セヴンティーン』

【キーワード】
プレモダンとポス/トモダン/路地と法・道徳の外部/オリュウノオバと「声」/本居宣長と『近代以前』/フォークナーと「南」/『愛国の血糊』/敗戦国日本と南部/転落への生理的恐怖/吉行淳之介『夕暮れまで』/戦後民主主義の欺瞞