岩田温×山崎行太郎 今こそ「江藤淳」を読み返す⑥
【概要】
江藤淳のアメリカ論を本格的に論じたいとして『アメリカと私』を取り上げ、江藤が20代でプリンストン大学ロックフェラー財団の研究員として留学した経緯や、明治以来アメリカに留学した日本人が抱く屈折した対米意識を紹介する。江藤は加藤周一の「気取り」を許せず、日本語を大切にしながらアメリカ人になろうとする者への批判を展開したと述べ、同時に自身は国際文化振興会編『古典日本文学』の英訳講座を担当するなど、日本文学をアメリカに紹介する実践的努力を惜しまなかったと指摘する。さらに、江藤が原爆投下や沖縄への冷淡さといった日本人の対米卑屈さを厳しく批判する一方、アメリカの人種差別や「ウェイ・オヴ・ライフ」の欺瞞性、真珠湾やナチスのユダヤ人虐殺になぞらえたアメリカ批判をも展開していた点を紹介し、江藤の対米認識の両義性と一貫した「存在」への関心を強調している。
【参考文献】
江藤淳『アメリカと私』
江藤淳『文学と私・戦後と私』
江藤淳『閉された言語空間』
エドマンド ウィルソン『愛国の血糊』
加藤周一『読書術』
『日本古典文学大系』
折口信『日本文学史ノート』
【キーワード】
『アメリカと私』/プリンストン留学/加藤周一/ヴィリエルモ神父/日本文学の英訳紹介/原爆と沖縄への視座/ウェイ・オヴ・ライフ/アメリカの人種差別/真珠湾とナチス比較/対米認識の両義性
考察・保守主義「独裁者を生んだフランス革命」
【概要】
革命の暴力性が特定の思想家や派閥に限らず、政治そのものの本質に根差していたことを論じる連載第四回である。カール・シュミットの友敵理論を援用し、政治的複数性を否定して敵対者を非人間化する二元論的思考が、ジャコバン派だけでなく革命全体に浸透していたと指摘する。連合赤軍やロラン夫人・マリー・アントワネットの処刑、ジロンド派とジャコバン派の凄惨な内部粛清の実例を挙げ、革命の「同志殺し」が繰り返された構造を示す。さらにロベスピエールの「徳と恐怖」の論理を検討し、シュミットの「例外状態」論を手がかりに、革命政権が非常時において徳の実現のために恐怖=暴力を必要とした理路を解明する。地方の統制経済政策への反発から広がった終わりなき粛清の連鎖も描き、革命の恐怖政治が理念そのものに内在した必然であったことを浮き彫りにしている。
【参考文献】
カール・シュミット『政治的なものの概念』
『カール・シュミット著作集』
ジュール・ミシュレ『フランス革命史』
レオ・シュトラウス『僭主政治について』
ピーター・マクフィー『ロベスピエール』
ジャン=クレマン・マルタン『ロベスピエール』
【キーワード】
フランス革命/カール・シュミット(友敵理論)/非人間化の論理/ジロンド派とジャコバン派/ロベスピエール/徳と恐怖/例外状態/統制経済政策/恐怖政治の必然性
岩田温×山崎行太郎 今こそ「江藤淳」を読み返す⑤
【概要】
江藤淳『小林秀雄』における小林のドストエフスキー論への評価を取り上げ、小林の評伝は史実や事実関係を軽視した主観的な「構図」の上に成り立っており、それを歪んだ「白痴」的解釈と見る学者の批判に対し、江藤はむしろその主観性を肯定的に捉えていたと指摘する。江藤にとって重要なのは客観的正確さではなく、「人間の現実性」を描くことであり、小林が「思想」よりも「人間」の生きている実感を重視した姿勢に共鳴していたと論じる。さらに、小林秀雄が転向論において人間の弱さや現実を直視し、思想に喰われない生き方を貫いたことを江藤も高く評価していたと述べ、江藤自身がドストエフスキー論を通じて自分自身の思想と対峙し、否定主義者や賢人達への反発を込めて「果てまで歩いて来た」と自己を語っていた点に注目する。江藤の批評は常に自己の生き方そのものと結びついていたと総括している。
【参考文献】
江藤淳『小林秀雄』
小林秀雄『ドストエフスキイの生活』
小林秀雄『文學界』「政治と文学」
E・H・カー『危機の二十年』
ドストエフスキー『罪と罰』
ドストエフスキー『白痴』
フリードリヒ・ニーチェ『ツァラトゥストラはこう語った』
江藤淳『夏目漱石』
【キーワード】
小林秀雄のドストエフスキー論/「構図」と主観性/人間の現実性/思想に喰われない生き方/転向と人間の弱さ/『罪と罰』/E・H・カー/客観性より生の実感/自己と対峙する批評
考察・保守主義「キリスト教を憎悪した革命」
【概要】
フランス革命が保守主義の観点からも宗教的自由・平等・博愛の理想を裏切るものであったことを論じる連載第三回である。革命政権が制定した聖職者民事基本法により、聖職者は選挙で選出され国家の管理下に置かれ、宣誓を拒否した「不宣誓司祭」への弾圧を通じてカトリック秩序が破壊された経緯を示す。続いてヴァンデ地方の内乱を取り上げ、徴兵令や宗教弾圧への反発から蜂起した住民に対し、革命政権が女性や子供を含む住民を虐殺し、皮革工場での人体利用など常軌を逸した蛮行に及んだ実態を、複数の資料に基づき詳述する。さらに、こうした虐殺を「正義」の名の下に正当化する革命家の論理や、反キリスト教情念が内乱の一因であったとする歴史研究者の見解を紹介し、フランス革命の暴力性と宗教的迫害の実相を浮き彫りにしている。
【参考文献】
ピーター・マクフィー『フランス革命史』(白水社)
森山軍治郎『ヴァンデ戦争』
【キーワード】
保守主義/フランス革命/ヴァンデの反乱/聖職者民事基本法/カトリック教会/革命権力/恐怖政治/宗教弾圧/伝統的共同体/革命思想
岩田温×山崎行太郎 今こそ「江藤淳」を読み返す④
【概要】
江藤淳が小林秀雄をめぐって「政治をめぐる転向」と「文体論をめぐる転向」という二つの転向を主張していた点を整理し、自身は小林秀雄の「存在」の中で反省しない姿勢を鋭く追及したと語る。江藤は『小林秀雄』において、小林の思想と実体の関係を徹底的に問い、「作家は行動する」を書いた頃から一貫して「存在」の問題にこだわっていたと指摘する。特に『ひかりごけ』評をめぐり、江藤が武田泰淳との対談で人肉嗜食という行為を端的にイメージ化する小説の手法を高く評価していたことに触れ、江藤にとって「存在」とは「我在り、しかしなにゆえに」という根源的な問いであったと論じる。さらに、小林秀雄の翻訳や近代化論を通じて、日本の開化が「上滑り」であったという小林の指摘を江藤も継承しつつ、戦後日本において「存在」を追求できるかどうかという課題こそが江藤淳を貫く思想の核心だったと総括している。
【参考文献】
江藤淳『小林秀雄』
江藤淳『作家は行動する』
武田泰淳『ひかりごけ』
小林秀雄『Xへの手紙』
夏目漱石『現代日本の開化』
小林秀雄『近代絵画』
小林秀雄『ドストエフスキイの生活』
【キーワード】
小林秀雄と江藤淳/二つの転向(政治・文体)/「存在」への追求/『ひかりごけ』/作家は行動する/近代化と上滑り/翻訳と近代絵画論/武田泰淳/ドストエフスキー論
考察・保守主義「フランス革命は進歩にあらず」
【概要】
革命礼賛の風潮とバークによる批判を対比しつつ、フランス革命史の実像を検証する連載第二回である。バークは『フランス革命の省察』において、抽象的権利を掲げて旧体制を暴力的に破壊した革命の粗暴さを批判し、ペインらの反論を退けた。続いて、歴史を目的論的必然とみなす「歴史主義」の誤りを指摘し、ルイ十六世が実際には啓蒙的で寛容な、開明的な君主であった実像を紹介する。バスティーユ牢獄襲撃の実態や、群衆が扇動によって暴徒と化していく過程、ロベスピエールによる恐怖政治への傾斜、マリー・アントワネットへの残虐な虐殺などを詳述し、革命が理想とは裏腹に大量殺戮と混乱をもたらしたことを示す。最後に、王の処刑を正当化した革命家の言説を引きながら、狂気に満ちた革命の暴力性を改めて浮き彫りにしている。
【参考文献】
エドマンド・バーク『フランス革命の省察』
トマス・ペイン『人間の権利』
スタール夫人『フランス革命文明論』
ピーター・マクフィー『ロベスピエール』
ピーター・マクフィー『フランス革命史』
ジャン=クリスチャン・プティフィス『ルイ十六世』
ジュール・ミシュレ『フランス革命史』
【キーワード】
フランス革命/エドマンド・バーク/歴史主義批判/ルイ十六世/バスティーユ牢獄襲撃/ロベスピエール/恐怖政治/マリー・アントワネット/進歩史観への批判
岩田温×山崎行太郎 今こそ「江藤淳」を読み返す③
【概要】
江藤淳の「転向」批判を巡り、小林秀雄との対談を機に江藤が『作家は行動する』を書き上げた背景を語り、江藤は「私」を大切に生きた誠実な作家であり、単純に転向したとは言えないと擁護する。さらに『危険な思想家』での松原新一の江藤淳論批判に触れ、「安全な思想家」という括りに反発しつつ、江藤の言説自体は変化しても、自己の内的誠実さを保ち続けた点にこそ価値があると強調する。イデオロギーに完全には生きられない現実の中で、父・子・胡麻を養う日常を持ち出しながら、純粋なイデオロギーだけで生きる人間は非現実的であり、むしろ生活と思想を両立させることこそ重要だと説く。また、真理は永遠には掴めず、常に問い続ける姿勢こそが思想家の誠実さであるとし、江藤の生涯全体を通じてその一貫した態度を高く評価している。
【参考文献】
江藤淳『作家は行動する』
江藤淳『成熟と喪失』
中野重治『村の家』
吉本隆明『転向論』
西尾幹二『歴史の真贋』
三島由紀夫『英霊の聲』
三島由紀夫『憂国』
【キーワード】
江藤淳の「転向」/誠実と役割/小林秀雄/危険な思想家/イデオロギーと現実/松原新一/吉本隆明/生活と思想の両立/真理は永遠につかめない/一貫性より誠実性
岩田の新著『自民党が消滅する日』が現代ビジネスで紹介されました!
・「自民党よ、お前はもう死んでいる」… 保守系政治学者・岩田温が警鐘する「自民党が消滅する日」への”ヤバすぎる危機感”と「日本が消滅しないため」に”今やるべきこと”
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