【岩田温の備忘録】蓮舫氏、百田尚樹氏、石平氏の出馬で考えたこと

朝、起きてニュースを見ていて驚いた。

トランプ大統領がSNSにイラン・イスラエルの停戦が合意されたと投稿したという速報だった。

一体何があったのか、現時点では何もわからない。

分からないことだけが分かるという不思議な状態だ。

しかし、トランプ大統領の投稿の通りに事態が推移するのか事態を見守る必要があると考えていた。

石破外交の稚拙さや日本外交の問題等ニュースを見ていると思うところは様々あるが、自分の仕事をしなければと思い、『愛国の血糊』を読んでいた。

だが、その他にも立て続けにニュースが入ってきた。

蓮舫、石平、百田尚樹の三氏の参院選出馬の速報である。

蓮舫氏が参院選出馬を模索し、執行部もそれを了承しているとの噂はかねがね流れていた。

都議選で表舞台に立って、候補者を応援していたのは、その地ならしだろうとも語られていた。

だから、彼女の出馬に驚くこともなかった。

百田氏の出馬も想定内だった。

ただし、特定枠を利用し、自分以外の候補者を受からせる戦術だろうと思っていたので、特定枠を使わないことにだけ驚いた。

しかし、記者会見で体調の問題について言及していたことに象徴されるように、当選しても議員を続けるつもりは感じられない。

当選し、政党が一議席を獲得した上で、辞任するつもりだろうか。

特定枠を使うことは合法的だが、党内融和を乱す行為と見做される。

党内融和を重視しているようには見えないので、「卑怯者」呼ばわりされたくないのだろう。

だが、特定枠を使わずに、当選後の議員辞職を見込んだうえでの立候補であるならば、これは道義的な問題を問われることになる。

勿論、違法行為ではない。

しかし、「脱法的行為」と見做されても致し方ないだろう。

「百田尚樹氏に当選し、活躍してほしい」と願う有権者を裏切ることになるからだ。

だが、恐らく、「違法」でなければ何をしても構わないという人々の集まりだろうから、倫理的な痛痒を感じることもないだろう。

一番驚いたのは、石平氏の出馬だった。

以前、出馬宣言をした際、SNSでの誹謗中傷で家族がパニック状態に陥ったとのことで出馬を取りやめていた。

再度の出馬声明となった。

一番問題視されているのが、石平氏が帰化一世であることだろう。

かねてから、帰化一世の人々に被選挙権を付与する現行の法体制に対して私は批判的だった。

古い表現になるが「忠誠心」の問題で懸念が残るからである。

母国への愛情と日本との愛情を比較することは難しいかもしれない。

だが、仮に母国への愛情が勝っていた際、国益のために戦う政治家にはなり得ないはずだ。

従って、現在の法制度を改革し、帰化一世の被選挙権は付与しないとすべきだと考えていたし、今も、そう考えている。

だが、現行の法体制では、帰化した、帰化していないを明らかにすることなく、帰化一世の人々が政治家になれる。

そして、実際に、国会議員の中には帰化一世の政治家が複数存在する。

恐らく、私が知っている政治家以外にも出生を黙ったままで日本の政治家となっている人々も存在するはずだ。

これは現時点では違法ではない。

だから、彼らを糾弾することは出来ないし、政治家を辞せと強要することは人権侵害にあたる可能性も否定できない。

現行法を変えなかった我々、日本国民の怠惰の故に、帰化一世の政治家が日本では活躍できるのだ。

だから、石平氏について、「帰化人だから出馬を取り消せ」と迫るのは、法を理解していない。

自身が帰化一世に投票したくないとの選択をするのは自由だ。

しかし、帰化一世の出馬を論難するのであるならば、その責任は、こうした現行法を放置していた政治家、そして国民にあることを忘れるべきではない。

なお、石平氏の掲げる重点政策に私は強く共鳴する一人である。

とりわけ、「帰化制度の厳格化」、「帰化資格取り消し制度の制定」に賛同する。

日本国籍を付与された帰化一世が天皇陛下を国外追放してしまえば、皇室の問題など片が付くなどと嘯く国家は健全ではない。

【岩田温の備忘録】公明党は何故、負けた?

参議院選挙の前哨戦に位置付けられている都議選が終わった。

結果は自民党の歴史的惨敗だったが、その他にも幾つか興味深い点があった。

最も興味深い点は公明党の弱さである。

現有議席が23あったにもかかわらず22人の公認しか出さないという選挙戦術にも驚いたが、彼らが目指していたのは「全員当選」であった。

過去8回の都議選において公明党で公認された候補者は落選していなかった。

いわば無敗神話が存在したのだが、この神話が崩壊することになった。

神話は何故、崩壊したのだろうか。

池田大作というカリスマ的指導者が亡くなった影響を指摘する声もある。

確かに、一つの宗教組織にとってカリスマの喪失は痛手であろう。

しかも、その後、新しいカリスマ的指導者が出現していない。

組織としての創価学会は安泰なのかもしれないが、かつての戦闘的な勢いが見られないのも事実である。

だが、カリスマ的指導者が逝去しただけが敗因ではないだろう。構造的な問題もあったはずだ。

かねてより囁かれていた学会員、すなわち熱心な運動員の高齢化の問題が深刻なのではないか。

日本では信仰者の実数を把握することは極めてむずかしい。

驚くのは、各宗教団体が申告する信者数を合計すると日本国民全体の人口を越えてしまうという奇妙な結果だ。

何を以て信仰者とするのか定義も難しいし、実数を抑えることは困難だ。

それぞれの宗教団体の信仰者の数、男女比、年齢構成を正確に把握するのは不可能といっても過言ではない。

確実に言えるのは日本全体で少子高齢化が進んでいる中、宗教のみがその影響を受けないということはあり得ない。

何よりも深刻なのは、熱心な運動員として働く世代は限られていることだ。

サラリーマンのような仕事に就いている人が選挙期間中に熱心に選挙活動に従事することは不可能だ。

かつて選挙活動の中核を担っていた60代、70代の人々が高齢化してしまった可能性は否定できない。

また、もうひとつ考えられるのは、共働きの影響を受けているのではないかとの点だ。

子育てを終えた専業主婦が多ければ、選挙活動に力を入れることが出来るのは間違いないが、女性の社会進出に伴い、働く女性が増えれば増えるほど、選挙活動に参加できる女性は減ることになる。

私自身、色々な選挙の現場に入って驚いたのは、選挙活動に熱心なのは圧倒的に高齢者、専業主婦の方々が多いという現実だった。

学生たちのボランティアは少ない。平日働く世代のボランティアはほぼ皆無だ。

せいぜい土日にやってきてくれる程度だ。

高齢化と女性の社会進出。

公明党の退潮の原因を考える上で参考になるかもしれない。

【岩田温の備忘録】イランを攻撃 トランプ演説で気になる点

驚くべき一報だった。

トランプ大統領がイランの核施設を攻撃したことを告げる演説を行った。

読売新聞から引用しておこう。

米軍はイランのフォルドゥ、ナタンツ、イスファハンの三つの主要な核施設に対し、大規模な精密攻撃を行った。

長年にわたり、恐ろしく破壊的な計画を企ててきたこれらの施設の名を誰もが耳にしてきた。

我々の目的は、イランの核濃縮能力の破壊と、世界最大のテロ支援国家がもたらす核の脅威を阻止することだ。

私は世界に対し、これらの攻撃が軍事的に大成功したと報告できる。

イランの主要な核濃縮施設は完全に壊滅された。

中東の暴君であるイランは今、平和を築くべきだ。

さもなければ今後、攻撃はさらに大きく、容易になるだろう。

イランは40年間にわたり、「米国に死を、イスラエルに死を」と言ってきた。

道端の爆弾で我々の国民を殺し、手足を吹き飛ばしてきた。

彼らの憎悪の結果、我々は1000人以上を失い、また、中東全域、世界中で数十万人が亡くなった。

特に(イラン革命防衛隊の)ソレイマニ司令官によって殺された人は多い。

私はとうの昔に、このような事態は許さないと決意した。(イスラエルの)ネタニヤフ首相に感謝と祝意を表す。

我々はかつてないほどのチームワークで協力し、イスラエルに対するこの恐ろしい脅威を根絶するために大きな進歩を遂げてきた。

私はイスラエル軍の素晴らしい職務遂行に感謝したい。

そして何よりも、素晴らしい装置(B2爆撃機など)を操縦した偉大な米国の愛国者たちと、世界が何十年も見たことのないような作戦を実行した全米軍を祝福したい。

これだけの容量での対応はもう必要なくなるだろう。

そう願っている。

ダン・ケイン統合参謀本部議長をはじめ、今回の攻撃に関わった全ての優秀な軍人に祝意を表す。

とはいえ、このままでは済まされない。

この8日間で、イランにとって平和が訪れるか、我々が目撃したよりもはるかに大きな悲劇がやってくるかのどちらかだ。

まだ多くの標的が残ることを忘れてはならない。

今夜の攻撃は、これまでで最も困難で、最も致命的なものだっただろう。

しかし、平和がすぐに訪れないということになれば、我々は他の標的を正確かつ迅速に、巧みに攻撃する。

そのほとんどは数分で実行できる。

我々が今夜実施したようなことが可能な軍隊は世界のどこにも存在しない。

皆様に、そして特に神に感謝する。我々は神を愛し、偉大な軍を愛している。中東に、イスラエルに、そして米国に神の祝福がありますように。(https://www.yomiuri.co.jp/world/20250622-OYT1T50083/

重要なのは「ネタニヤフ首相に感謝と祝意を表す」との言葉と、締めくくりの次の言葉だ。

「皆様に、そして特に神に感謝する。我々は神を愛し、偉大な軍を愛している。中東に、イスラエルに、そして米国に神の祝福がありますように」

アメリカが他国を攻撃すると、「ネオコン」の仕業かと大騒ぎする人々がいる。

確かに、イラク戦争で主導権を持っていたのはネオコンと呼ばれる人々だった。

ネオコンの始祖はアーヴィング・クリストル。

元トロツキストのユダヤ人だ。彼が尊敬していたのはレオ・シュトラウスとライオネル・トリリング。

多くの保守主義者が尊敬しているエドマンド・バークをそれほど評価していないのが特徴だった。

彼らが好んだのは体制変革、すなわち全体主義から民主主義への転換だ。

確かに、イランにおける体制変革を目指しているという意味で今回のアメリカの攻撃はネオコン薫りが漂う。

しかし、今回、より重視しなければならないのは福音派だろう。

アメリカの有権者の四分の一が、プロテスタントの非主流派である福音派を信仰しているとされている。

福音派をひとくくりにすることは粗雑かもしれないが、聖書を原理主義的に理解し、進行する人々と考えておけばよいだろう。

そして彼らが信ずるのは黙示録であり、ハルマゲドンだ。

何か陰謀論めいたことを論じているように思われる人もいるかもしれないが、実際に彼らの多くがそうした信仰を抱いている事実は否定できない。

千年王国の信仰を抱いている彼らは、イスラエルを極めて重視する。

彼らを突き動かしているのは、ユダヤ・マネーというよりも、信仰なのだ。

むろん、ユダヤ・ロビーが大きな影響力を有していることは否定できないが、信仰の力は強固だ。人は必ずしも経済的な利害関係だけで動かない。

信仰の力によって動くことも少なくない。

自らの支持基盤である福音派の願望を断ち切って、トランプ大統領がイスラエルに強硬な姿勢を示すことはない。

トランプ大統領のイスラエル支持、神への感謝は米国内の福音派に向けたメッセージと受け取ることが出来る。

それにしても、今後の世界がどうなるのか、日本も無関心ではいられない。

【岩田温の備忘録】SNSで暴言を吐く哀しきおじいちゃん

これに対して次のようなコメントが寄せられた。

意見の異なる他者にペットボトルを投げつけるのも異常だが、こうした罵声を浴びせてくるのも常軌を逸している。

一体どのような人物なのか興味を持ってプロフィールを眺めると、次のように記されている。

「1965年生まれ 愛車:ロードスターNCEC 週末は孫達と楽しく遊んでいます。」

プロフィールの真偽は調べようがないが、仮にこのプロフィールが真実だとすれば、御年60、還暦を迎える年齢となる。

そして孫もいる。

果たして、こうした祖父の行動を知った孫たちはどのように感じるのだろうかと考えると、孫たちが不憫に思えてならない。

いい年をした祖父が誹謗中傷を書き込んで悦に入っているのだ。

まともな孫なら、祖父を軽蔑するだろう。

少なくとも立派な祖父だとは思うまい。

そんなことを思いながら、次のように投稿しておいた。

それでは、皆さま、よい週末を!

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【岩田温の備忘録】『国宝』は素晴らしかった!

『国宝』を観た。

FaceBook で多くの方々激賞していたこと、そして、先日対談させていただいた長尾和宏先生が「一万円払ってでも惜しくない、感動の映画」と仰っていたことが直接のきっかけだった。

早朝に起きて、ゲラの修正を編集者に送り、朝食を取って、すぐに映画館へ向かう。

三時間もあるというので、膀胱が破裂しないために、トイレに行って、その後、水は飲まないと決める。

映画の時間には間に合うが、ギリギリ。

しかし、映画は始まるまでの宣伝が多い。

始まったと思ったら、あっという間に引き込まれる。

歌舞伎が中心だと聞いていたので、ゆっくりとした展開が続くのだと思っていたが、冒頭から意表を衝かれた。

ヤクザと歌舞伎。

どちらも堅気ではない。

しかも、技量と同時に血統が重要になる。

内容について論ずると、これからご覧になる方々の邪魔になってしまうので、控える。

心動かされたのは、『曾根崎心中』を演じる二つの場面だ。

一度目も二度目も圧倒的な演技力、鬼気迫る役者魂を感じた。

最近観た邦画の中で最もよかった。

映画館の大スクリーンで見ると迫力満点。

また、歌舞伎の美そのものを感じることも出来る。

お勧めの作品だ。

俳優のことは全くと言って知らないのだが、主演した吉沢亮はすごい役者だ。

この作品に懸けた情熱が伝わる。

『国宝』は世界で勝負できる作品だ。

恐らく、多くの外国人たちも魅了する力を持っている。

日本の映画の底力を感じることが出来て、嬉しい一瞬でもあった。

もう一度、映画館に観に行きたい。

【岩田温の備忘録】今月、読む本

編集部からゲラを送ってもらったので、若干の修正をして返送する。

これで今月の雑誌関係の原稿は終了。

髪が大変なことになっていたので散髪。すっきりした。

ようやく終わったと思っていると、次回の連続対談の日程が決まる。

文藝評論家の山崎行太郎先生と江藤淳を巡って、毎月対談をしている。

政治的見解は全く異なるのだが、江藤淳を尊敬する点で一致。

全てが一致する人は存在しないし、仮に存在しても、話す必要がない。違うから話していて面白い。

次の対談までに読む資料を決定する。

江藤淳の作品を読むのは当然として、エドマンド・ウィルソン『愛国の血糊』(研究社)を再読し始める。

南北戦争については余り多くのことを知らないので南北戦争関係の書籍も乱読する。

来月は仕事で熊本を訪問するので、神風連関係の本も読んでおきたい。

三島由紀夫全集の中から『豊饒の海』を取り出して、読み始める。

久々の三島文学。文章が美しいが、美しすぎるところに何か違和感を覚えてしまう。

他にも神風連の本は多いので、こちらも乱読。

連載で必要な本を読み、仕事で必要な本を読んでいると、なかなか読みたい本が読めないのだが、時間を見つけて読み込みたい。

江藤淳

三島由紀夫