月刊正論9月号に岩田温の論説が掲載されました!

考察・保守主義「狂気を生む『国民の意志』の論理

【概要】
ルソー『社会契約論』の中核概念「一般意志」の危険性を検証する。まず「一般意志」を「個別意志」や単なる多数決である「投票の数」と区別し、共通の利益を志向する構成員全体の意志として位置づけるルソーの理論を確認しつつ、その具体的な現れ方が不明確であるという根本的欠陥を指摘する。続いてカール・シュミットの議論を援用し、「一般意志」の空白を埋めるものとして独裁的指導者が現れやすいこと、実際にワイマール共和国崩壊後のナチス・ドイツにおいて同様の論理が機能した歴史的事実を示す。さらにロベスピエールが「一般意志」を掲げてフランス革命の恐怖政治を正当化し、共同体の危機を口実に独裁権力を無期限に容認する論理を導いた経緯を詳述し、福田歓一の解釈も参照しながら、「一般意志」という抽象的概念が容易に全体主義や恐怖政治に転化する危うさを警告している。

【参考文献】
ジャン=ジャック・ルソー『社会契約論』
カール・シュミット『現代議会主義の精神史的状況』
福田歓一『ルソー』

【キーワード】
ルソー『社会契約論』/一般意志/個別意志・全体意志/カール・シュミット/ワイマール共和国/ナチス・ドイツ/ロベスピエールと恐怖政治/独裁の正当化/中間組織・自治団体/福田歓一の解釈

月刊日本8月号に岩田温の論説が掲載されました!

岩田温×山崎行太郎 今こそ「江藤淳」を読み返す⑱

【概要】
江藤淳が大庭みな子『寂寞』を高く評価し、大庭が学生時代からアメリカ文学に親しみ、老子や道教哲学にも通じていた点で江藤と共通の関心を持っていたと紹介する。江藤自身が老子の「道」に若い頃から関心を寄せていた経緯に触れ、谷崎潤一郎『鍵』と大庭『寂寞』を比較しながら、谷崎が乱倫と荒廃を通じて秩序崩壊後の世界を描いたのに対し、大庭は名づけえない混沌そのものを描いたと論じ、江藤がこの「名前のない世界」に強く共感していたと指摘する。さらに江藤の「治者」概念を援用し、統治や秩序を失った世界を描く文学の意義を論じつつ、ニーチェの「三様の変化」やドストエフスキー『罪と罰』を引きながら、混沌から新たな秩序と創造性が生まれる過程にこそ人間の本質があると述べる。最後に、暗黒や死を見つめることによってのみ人間は真の秩序を回復しうるという江藤的な問題意識を確認している。

【参考文献】
大庭みな子『寂兮寥兮』
大庭みな子『三匹の蟹』
谷崎潤一郎『鍵』
江藤淳『自由と禁忌』
老子『老子道徳経』
フリードリヒ・ニーチェ『ツァラトゥストラはこう語った』ドストエフスキー『罪と罰』

【キーワード】
大庭みな子/『寂寞』/老子の「道」/谷崎潤一郎/『鍵』/名づけえない混沌/治者の文学/秩序と荒廃/ニーチェ/「三様の変化」/ドストエフスキー/『罪と罰』/荒廃からの創造/暗黒と死の凝視