令和8年3月7日(土)に大阪で公開収録を行いました。
「勇気の研究」をテーマに戦前、
第二部は4月11日(土)に開催予定でございます。詳細が確定次第ご案内申し上げます。
考察・保守主義「それでも国家が好き」
【概要】
国家否定を志向したかに見えるルソーが、実は国家の起源を熱心に構築しようとした矛盾を検証する。まず、政治哲学において国家の存在を無視することは政治論そのものを否定するに等しいとし、ホッブズの『リヴァイアサン』における自然状態論を参照しつつ、ルソーもまた社会契約論という枠組みで国家成立を説明しようとした点を確認する。続いて『人間不平等起源論』を中心に、私有権の発明と法律の制定が人類に不平等と隷従、そして不幸をもたらした過程をルソーが四つの時代区分で描いたことを詳述し、自己保存の感情や「憐れみ」の情に基づく自然人像、文化・文明が人間を堕落させるとする議論を紹介する。最後に、ルソーが自然法と実定法の矛盾に自ら気づきながらも国家の理想像を描き続けた点、ジュネーヴ共和国への献辞に託した理想と現実の乖離を指摘し、ルソー思想の本質的な矛盾を浮き彫りにしている。
【参考文献】
トマス・ホッブズ『リヴァイアサン』
ジャン=ジャック・ルソー『人間不平等起源論』
ジャン=ジャック・ルソー『社会契約論』
【キーワード】
ルソー/国家否定と国家構築の矛盾/ホッブズ/『リヴァイアサン』/社会契約論/『人間不平等起源論』/私有権の発明/自然状態・自然人/憐れみの感情/文明堕落論/自然法と実定法の矛盾
岩田温×山崎行太郎 今こそ「江藤淳」を読み返す⑬
【概要】
江藤の祖父・安太郎が海軍兵学校を首席で卒業した優秀な軍人であり、御前講演で「我皇帝陛下」という呼称を用いていたことに触れ、当時の天皇観が今日とは異なる位置づけだったと指摘する。また祖父・民三郎が「馬鹿者!この戦争は負けだぞ!」と激怒したエピソードを紹介し、江藤が「存在の闇」に踏み込み、祖父の怒りや無念を丁寧に描き出したことを評価する。さらに、江藤淳が民三郎の故郷を訪ね、江藤なりの取材やノンフィクション的手法で文章を書いていた点に触れ、田中角栄が小林秀雄に評価された「生きている文体」を持っていたのに対し、田中の演説には「私」という言葉がまったくなかったと指摘し、政治家の言葉と文学者の言葉の違いを論じる。最後に『一族再会』が第一部で完結し、第二部が書かれなかった理由について、江藤にとって「私」を探究する場所が閉じられてしまったからだろうと考察している。
【参考文献】
江藤淳『一族再会』
江藤淳「帰りなん、いざ」
江藤淳『季刊芸術』
【キーワード】
天皇と「私」/「馬鹿者!この戦争は負けだぞ!」/田中角栄/政治家の言葉と「私」の不在/『一族再会』/「帰りなん、いざ」/ノンフィクション的手法
・維新共同代表・藤田文武×岩田温/保守するための解散総選挙
・考察・保守主義「思想家ルソーの建前と本音」
【概要】
ルソーの言説と実際の行動・本音との乖離を検証する。まずレオ・シュトラウスの「秘教的教え」論を手がかりに、思想家のテキストを読む際には表向きの主張と行間に隠された真意を区別すべきだとする読解方法を提示する。続いて『人間不平等起源論』の献辞でルソーがジュネーヴ共和国を賛美しつつも、実際には理想の共和国像とジュネーヴの現実が乖離していたことを、ルソー全集所収の書簡や献辞本文を通じて詳細に検討する。さらに『ダランベール氏への手紙』において、ルソーが演劇を「文明の堕落」として否定しながらも、自らは劇作家として活動していた矛盾を指摘し、革命を鼓舞しつつも実際には革命の惨状を知れば否定的だったであろう可能性にも言及する。ジュネーヴ共和国が体現すべき六つの理念を列挙しつつ、ルソーの思想の建前と本音の複雑な関係を浮き彫りにしている。
【参考文献】
レオ・シュトラウス『迫害と著述の技法』
ジャン=ジャック・ルソー『人間不平等起源論』
ルソー「ダランベール氏への演劇に関する手紙」
「ペルドリオ(ジュネーヴ共和国牧師)宛の手紙」
【キーワード】
ルソー/レオ・シュトラウス/秘教的教え(エソテリックな読解)/『人間不平等起源論』/ジュネーヴ共和国/建前と本音の乖離/ダランベールへの手紙/演劇批判と劇作活動の矛盾/理想の共和国像/革命への両義的態度
岩田温×山崎行太郎 今こそ「江藤淳」を読み返す⑫
【概要】
江藤淳が学術論文とは異なり「私」という言葉を用いた著作を数多く書いてきたことを指摘し、江藤にとって「私」とは時代や歴史、社会に投影されるものであり、単なる自叙伝的関心ではないと論じる。『一族再会』を取り上げ、江藤が母方の祖母や祖父の生涯を通じて薩長史観に対する反発を描いていた点に注目し、勝者の記録である「正史」からは捉えられない「存在の闇」を、敗者側である佐賀・薩摩の視点から掘り起こそうとした試みだと評価する。また、江藤が三島由紀夫と対比しつつ、自らのルーツを探る作業を続けていたことを紹介し、小林秀雄と中原中也の対比についても、江藤が小林の都会的洗練と中原の望郷的な感性を意識しながら自らの文業を形成していたと指摘する。江藤の「私」の探究は、単なるエッセイの域を超え、歴史や伝統との対話そのものだったと総括している。
【参考文献】
江藤淳『一族再会』
江藤淳『小林秀雄』
中原中也『山羊の歌』
【キーワード】
『一族再会』/「私」の探究/存在の闇/佐賀の乱/薩長史観への反発/敗者からの歴史/小林秀雄/中原中也都会と望郷/歴史と伝統への対話
